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最果ての世界

最果ての世界

戦場の舞姫。

「そう、覚えていなくて…。なんだか、悪かったようだわ。」
 エマは、ウーリィの言葉を聞き苦笑しながら答えました。
けれど、エマは本当にそう思っているのをトトだけが知っています。
「エマ…。」
 だから、少し心配そうにトトはエマの顔を伺いました。
「大丈夫よ、トト。」
 そんなトトにエマは、先程とは違う綺麗な笑顔を向けました。
 その笑顔を見て、トトも少し安心したようにエマの頬に擦り寄りました。
「ゴメンなさい、余計な心遣いをさせてしまって…。」
 そんな二人のやり取りをみて、ウーリィは少し申し訳なく感じました。
「本当は、もう3年も前に滅びた国なんです。」
 ウーリィは、悲しそうに。それでも、しっかりと言葉を紡ぎました。
「そう、だったんだ。」
 トトは、そんなウーリィに複雑な気持ちを抱きました。
 騙されたと怒る気持ち、可哀想だと思う気持ち。
 トトにも、その悲しさが解るので。それ以上は何も言えませんでした。
「とても大切なものを、失くしたのね。」
 エマは、そんなトトを慰めるように優しく撫でながらウーリィに声を掛けました。
「でも、どうして私に聞いたのかしら?」
 エマは、優しい笑顔のままウーリィに尋ねます。
「ごめんなさい。騙すつもりでは、なかったんです。」
 ウーリィは、騙すような形になった事を素直に謝りました。
「ただ、まだソライがあった頃からエマさんが旅をしていたのなら。
 もしかして、行った事があるのかなって思って。」
 ウーリィの笑顔は、少しずつ悲しみを足して行くように見えました。
「それで、覚えていたのなら。そのまま、忘れないで欲しかったんです。
 僕の生まれた国、今は存在しない国、それでも覚えてて欲しかったんです。
 地図に載らない国だけど、誰かの記憶の中にあって欲しかったから。」
 ウーリィは、自分の国を心に描きながらエマに告げました。

「………ソライ、もしかして…。」
 エマは、何かを思い出したように呟きます。
「ねぇ、ソライと言う国は収穫祭で白い鳥を空に放つかしら?」
 エマが、だまソライがあった時に旅をした国のひとつを思い出して聞きました。
 他にもたくさんの国を旅したのに、エマの記憶に浮かんだのがその国でした。


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